唐突に、屋外プールにぶち当たると無条件に動揺する。否応なしに、あのころに引きもどされて、唇が。紫色になる心地がするから。
「高野川は近いんです。ちょっと歩いたら、高野川に出れます––」
音羽川を、遡るように歩いていく。
「やっぱり自然のなかに暮らす、っていうかな。自然に囲まれて暮らすってのは、本来そうあるべきだなってのがあって。人ってのはね––」
ゆるやかな坂道を、登っていく。植木が玄関先にて、どうにか並行を保とうとしていて、その基準ってなんだろう、とおもう。
ビニールハウスで、視界が遮られる。
直線と曲線が混ざりあって、重なりながら、この世界のかたちはつくられている。見えている風景だって、偶然だけでつくられているものではない。だれかが選び、判断している。うつくしさに正解はない。けれども、だれかが「これでいい」とおもったから、これがここに在るのだ。でも、どうにかこの風景のなかに偶然を見つけたい。そうおもうのは、ぼくだけだろうか。いくら必然の連続で形成されたものだとしても、そのなかにも偶然はあるはず。そして、その偶然のことをライブと呼ぶのではないだろうか。そんなことをかんがえながら、川沿いを歩いていた。
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