
夕刻の駅に降りて、すこしのあいだ佇んでみることにした。

「わりと静かなところやな、あそこも––」

季節はずれの、蝉の抜け殻を見つける。

室外機と、目があったような気がした。

草むらのなかに、なんとも言えない表情をした遊具が。まるで埋まっているようだった。

たくましい草花に遭遇すると、果てしがない気持ちになる。

ここに来なければ、あなたに出会わなかった。しかし、ここに来てしまったから、あなたに出会った。

だれか、畳んだひとがいるのだろう。

夜の湿度が漂いだす。鼻をつく、空気のかんじが、どことも似ていない。人工物と、もともとそこに在ったものとの融合が、三半規管を刺激して、すこしふらついた。そういえば、子どもたちの声が聴こえない気がした。犬と、散歩しているひとはときどき横切るけれど。

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