
夜が明けて、朝が白んでいく時間。ゆらゆらと歩いていた。

かつて、ここには、なにかが建っていて、そして、だれかの日常があったのかもしれない。

朝は、気がつくと空を眺めていたりする。電線は、複雑に絡みあって、そして家々へと分かれていく。

「京都の祇園がありますね、花街。そのちょっと行ったところに宮川町があるんです––」

給水塔から湯気が立っているみたい。

何百メートルもないくらいの、まっすぐの路地を、数分かけて歩いただけだった。しかし、その連続だとおもうのだ。ただ歩いて、あたりを見渡して、鳴っている音を聴く。それ以外に、なにができるのだろうか。だれかと話したあとは、ひとりになりたくなる。ひとりになって、ただ見て、聴いていたい。その連続のなかを、生きたい。
