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KAWASAKI YURIKO



イタリアーノのみんなと過ごしていると、不意に懐かしい感覚に陥ることがある。 それはいつだか、言葉をすこししか知らなかった頃のこと。遊び疲れて、母の膝にもたれながら、ぼんやり聴いていた大人たちの声。話の内容はよくわからないけれど、知っている言葉が飛び出す度に耳を閃めかせていた。 なんとなく込み入った話をしている大人たち、とても楽しそう。ふだん私と話すときよりも、すこしだけ低くて速い声。 いつまででも聴き続けていたかったけれど、大抵は心地よさと寂しさの中でうたた寝をした。 短く深い眠りの中、声はそのまま聴こえてくる。夢の中で、私は、大人たちが何を話しているのか、その全てを理解する事ができる。私自身もとても雄弁に、なにか込み入ったことを話せる。その上、これから何が起きるのか、自分が何をすればいいのかもわかっている。夢のような夢。

MUM & GYPSY 10th anniversary year

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